今回は陶人さんのギターの録音について書いてみます。ギター一本をどう録音すればいいのか。ここで私は10歳児に戻りました。
私の母は戦前からギターを習ってきた人で、特にセゴヴィアの演奏を大変好んで、自分でも演奏してきた人でした。いつも炬燵に入った状態で隣で演奏する母のギターを至近距離で聴いていました。それが当たり前で、それしか知りませんでした。まさに10歳児の記憶です。 今回の録音に際して、そういう音が再現できれば陶人さんのギターを最も伝えられるのではないかと考えた次第で今回のマイクセッティングになりました。 (ShinRecのインスタにその位置関係が写っています) 音楽が録音されている現場では、現場の写真が公開されていないのでどんなマイクセッティングなのか全くわかりません。録音技術者はそういった写真が公開されることに及び腰なのではないか?と変な疑念も生まれてしまいます。私は母のギターと私の耳が持っていた距離感をルナホールで再現することを目指しましたがどう感じられますか? by Shin2
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私たちが録音しているのは基本的にアコースティックな楽器たちです。そこで重要な点はどこで録音するのか?で、スタジオ、ホール、ライヴハウスなど様々です。最新作も含め私たちが最も多く録音しているのは兵庫県芦屋市のルナホールです。ここは収容人数700人の多目的ホールのため、残響が少なく設計されています。残響が少ないと仰る方もおられるようですが、私たちにとってはむしろ好都合です。それは最初に安次嶺悟氏のピアノトリオを録音した際に感じた「余分な響きの少ない所がジャズであれ、クラシックであれ小さい編成の録音には非常に適している。」と思うからです。例えばギター1本を教会のような響きの多い場所で録音すると、ギター本来の音と附帯音と言える残響がないまぜになってしまい、正確にソースを再現してくれる装置で再生した場合にはどこで演奏しているのか分からないという残念な結果になってしまうことも少なくありません。私たちの2本のマイクロフォンのみで録音するというアプローチは、録音環境を含めた音源の是非を常に問われていると考えています。 by Shin2
まず初めにこれから私の書いて行く文章を聴覚に障碍を持たれている方が読まれていたら、表現に至らないところがあるであろうことを謹んでお詫びいたします。
大前提の話ですが人間の耳は二つしかありません。クラシックのコンサートに行こうが、ロックのライブに行こうが聴いている人の耳は二つです。それにもかかわらず、音楽を録音する場合にどうしてたくさんのマイクを使うのでしょうか?それは個々の楽器や声をよりクリアに録りたいという録音側の考えです。電気を使った楽器の場合はマイクを通さずに直接ミキサー等に送られる場合がほとんどです。そうして録音したたくさんの音をミキサーで(今はパソコン上で)編集して音源を作っていくわけです。でもそれって作り手であるミュージシャンを置き去りにしてませんか?もちろん作った音源をミュージシャンの方に聴いていただいてOKをもらうのは言うまでもありません。でも途中で加工、改変、編集とかされていても・・・?。 by Shin2 TOHJIN classical guitaristがオーディオユニオン大阪店様にてご購入頂けることになりました。試聴盤もございますので、国内外のオーディオシステムでお聴きになれます。是非ご来店のうえDSD5.6448MHZ録音の真価をCD(HQCD)再生を通じてご体感ください。
www.audiounion.jp/shop/osaka.html 新年明けましておめでとうございます。忙しい毎日を送っていらっしゃる皆さんもい つもより少し時間があって久しぶりにLPレコードを引っ張りだして聴いておられたのではないでしょうか。年始にはとっておきのオリジナル盤をかけて楽しんだり。私もいつも通り新しい気分で正月用のレコードをかけました。ところで、私もオリジナル盤に凝った時期がありました。しかしながらオリジナル盤の良さや価値を認めつつも、自分が録音・CDの制作に関わるようになって一時の熱は冷めました。録音当事者の特権として自らが制作に関わった演奏がどういう状況で録音されたかを知ることになるので、いろいろなプロセスを経て市場に出たであろうレコードそのものに対して極めて冷静になったからです。今はオリジナル盤というよりも良い演奏と良い録音を楽しむようになりました。コレクション一つとっても何を所有しているか、人に見せたり自慢したりするのではなく、コレクションの内容にその人そのものが写し出さ れるような気がします。又、近年、オリジナル盤で市場に出回るものは比較的盤質等の程度が悪い割に高額です。良い物は簡単には手放さないので市場には出て来ませ ん。従って、ご本人がお亡くなりになる等によって遺族が処分でもしない限り良いものは市場に出て来ないのではないでしょうか。オリジナル盤は数に限りがあり現存数も減っているはずですので、この貴重な文化遺産を後世に残すにはどうすれば良いのかと思います。
by Shin1 前回(その①で)、偶々日本盤(国内盤)の話が出ましたので日本盤のことについて少し触れます。日本盤はプレスも丁寧ですし、レコード盤自体が高品質で、わざわざ海外のレーベルが日本でプレスするようなこともあります。しかしながら肝心の音質に関しては、海外盤(輸入盤)がオリジナルの場合は同じ作品の日本盤を殆ど上回ります。これはオリジナル盤か否かにかかわらず、レコードの元になるテープ(マスターテープ)からダビングされ音質的に不利なテープが日本に渡され、それを使って日本盤を製造するためと言われています。(マスターテープを他所に持ち出すことはご法度なのだそうです。) 以前、日本の某社がブルーノートの人気盤を選りすぐり、ジャケットに某社名も敢えて表記せずに特別復刻盤・特製重量レコードと称したLPを発売したのですが、同じ作品に関し私が所有する海外盤(オリジナル盤ではなく発売してから10年後にプレスされた中古盤)と比較した際も音質的には圧倒的に海外盤の方が優れておりました。音の鮮度、情報量、ステレオで再生される場合の楽器の位置等が日本盤とは違っていました。残念ながらそれが実態です。オーディオマニアの中には海外のものを日本盤でしか聴かない方が稀にいらっしゃいます。これは大変勿体ない話で、オーディオシステムにそれだけ凝るのであれば、(「オリジナル盤で」とは決して言いませんが)ソフトにもこだわりをもって頂きたいものです。最近、70~80年代の日本のシティポップの中古LPレコードが国内外で人気を呼び、高額で取引されているとか。日本盤独特の”オビ(帯)”が捨てられずに残っていると更に高額になるとか。この場合は、日本盤がオリジナルになるので、海外盤(存在するものもありますが)との比較はあまり考えなくてよさそうです。
by Shin 1 レコードのオリジナル盤とは書籍の初版本等と同じで、一つの作品が世の中に最初に出たものを指します。最初に出る数は音楽ジャンル、アーティスト、レコード会社の規模等によって様々です。その後、何度も再発売を繰り返し、CDの時代になって更に複雑な変遷を経て今日に至ります。私が今回取り上げるのは今から70~80年前のLPレコードの話ですが、磁気テープに音楽演奏を録音したものをレコードにしているものが大半だと思われます。音質面だけに特化して書きますが、食べ物に例えると出来立ての料理(音楽を録音したテープ)をすぐに缶詰(レコード)にしたものがオリジナル盤と言えましょうか。原則、鮮度(音質)は一番です。(厳密に言いますと、レコードの元になるテープ(マスターテープ)の方が音質は更に良いわけですけれど。)。その後、同じ料理を冷凍庫で保管して必要の都度解凍して缶詰にして行くとどうしても鮮度(音質)が落ちます。オリジナル盤は客観的な希少価値がついて、当然高額になって簡単には手に入れることができなくなります。しかも長い年月を経る内に未使用のままというわけには行かず、中古品で瑕疵(レコードについた傷、レコードの中心部分の穴の周りの紙のラベルについたヒゲ※、レコードジャケットのシミや破れ等)が少ない物ほど高額になります。以前、ビートルズの1stアルバムのオリジナル盤が中古でも2百万円近くの値がついていたのを見たことがあります。勿論、希少価値があるからなのですが、一体誰が買うのだろうかと思ってしまいます。ところで、日本盤のLPレコードは物価上昇の影響をあまり受けなかった物の一つではないでしょうか。私はレコードを自ら買い始めて50年以上になりますが、この間に重量盤等の特殊なものを除けばそれほど価格帯は変わっていませんね。せいぜい一枚2~3千円位でしょうか。CDも国内盤ではその位の価格設定ですね。[※ヒゲとは、レコードをレコードプレーヤーのターンテーブルにセットする際に、レコードをターンテーブルの中心の金属の突起物に斜めにあてがったためにレコードの穴の周りの紙のラベルについてしまったヒゲのような跡のことです。試しにお手元の中古盤をご覧になってください。レコードの中心にたくさんのヒゲがついて何と見苦しいことか。レコードに傷をつけること等は論外ですが、レコードは丁寧に扱いレコードの穴をターンテーブル中心部分の突起物に対し垂直に下ろしてセットし、ヒゲがつかないようにしましょう。プロでもちゃんと出来ていない方がおられますが、非常に残念なことです。自称マニアでオリジナル盤を保有する方ならば、この位はちゃんと出来て当然です。これはレコード愛好家のマナーです。]
by Shin 1 ShinRecは、音楽とオーディオが大好きな二人の還暦を過ぎたオッサンによる新レーベルです。今から13年前の2008年に日本の偉大なジャズギタリスト竹田一彦さんの演奏を後世に 残したいという一心で録音に取り組んだのが全ての始まりでした。 以後Blue Lab. Recordsさん、Waon Recordsさんに助けて頂きながら今日までやってきました。私は一昨年末まで会社員でしたが、本年11月19日発売のCD ”TOHJIN classical guitarist” 完成を機に今般ShinRecを立ち上げました。素敵な音楽をステレオ・ペアマイクを使った空気感たっぷりの良い録音で皆様にご提供してまいります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。このBLOGでは音楽、オーディオ、録音等を通じて我々が日頃思っていること等も呟きます。
乞うご期待! by Shin1 “TOHJIN classical guitarist” は 手工ギター専門店 ファナ大阪様でもお取扱い頂くことになりました。店舗ご購入及び通販が可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。 www.fana.co.jp/oosaka-annnai.html |
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April 2022
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